ぼくと攻城団の10年間

攻城団は城好きの趣味が高じて作ったサイトです、と紹介すれば話としてはわかりやすいのですが事実はそんなことなくて、取材で聞かれるたびに毎回「30代の頃に友人たちと〈大人の趣味〉を持っておかないと老後がヤバい、暇を持て余してコンビニやバスで怒鳴る迷惑な老人には絶対なりたくないので、そのためにも死ぬまでの暇つぶしになるような趣味が必要だと話して、いろいろ候補を出し合う中で城めぐりに決まり、日本100名城以外のお城も訪問記録を残したかったので作った」と説明しています。

たしか1回目の会議ではテーマ性のある旅行までしか決まらなくて、2回目で城めぐりになったはずです。そしてぼくが出した案は城ではなくロープウェイでした。このとき全国のロープウェイめぐりに決まっていたら攻城団は存在していないわけです。歴史というのはいろんな偶然が重なって出来上がっていくものですが、振り返ればそれが(勝手に)運命や宿命に見えるのかもしれません。
ちなみにこのとき友人たちと話したのは当時(2008年)ぼくが住んでいた家の近くにある大阪王将・広尾店で、さっきGoogleマップで調べたらまだありました。今度上京したら聖地巡礼的に訪問してみようかな。

大人の趣味を持つというのは手段であり、あくまでも目的は世間に迷惑をかける老人にならないことです。要するにどう時間を消化するか、どう社会とつながるか、をちゃんと考えておかないと独善的で煙たがられることはわかっていたので、それほどお金のかからない、それでいて仲間たちとライフワークとして何十年も楽しめる趣味を探した結果、あろうことか友人どころか全国5千人以上の方を巻き込んでしまったというのが攻城団誕生の経緯です。
この話をすると、記者さんたちはおもしろがって聞いてくれます。おそらくそれは風変わりなエピソードであるとともに現代人の「孤独」に関する問題に共感する方が多いんだろうと思っています。

趣味を通じて社会とつながることの重要性ははからずもコロナ禍で会社や学校に行けなくなったときに明らかになりました。これは老人特有の問題ではなく、若者も同じなのです。
昔のえらい人が言ったように、人間というのは社会的動物であり、社会を構成している実感が持てなくなったら(自分の存在に気づいてほしいから)おかしくなるのでしょう。
一方で、団員総会やオンライン評定などで話をする人は老若男女に関わらず、日々の充実っぷりが声や表情によく表れています。そのうちの何割が攻城団によって救えた人かはわかりませんし、救うなんて言葉を使うこと自体おこがましいのですが、みんなが社会に踏みとどまるきっかけになれていたらいいなと思います。

運転手を怒鳴りつけたところでバスは速くならないし、店員を土下座させたところで商品が安くなるわけでもありません。
そしてSNSに不平不満を書き散らかしたところで世の中が良くなることはありません。ぼくはもともと友だちが多いタイプじゃなかったのですが、インターネットに繋がって文字通り世界が広がりました。年齢も性別も住んでるところも異なる多くの人たちと知り合ったことで人生が変わりました。ぼく自身がインターネットに救われたひとりなのです。
だからこそインターネットの可能性を信じているし、いつか恩返しができたらいいなと思って攻城団を運営しています。立ち上げた頃はそんなことまで考えてもいなかったんですけどね。

この10年間、ほぼ毎日休まずに運営してきましたが、サイトの管理者として心がけていることがふたつあります。それは
・他人の「好き」を否定しない
・いまの知識で、過去の自分(と似たような人たち)を笑わない
ということです。
これらに賛同していただけない方には直接「攻城団は向いてないです」とお伝えして利用をやめていただくことを提案してきました。「会員数はひとりでも多いほうがいい」とするサイトがほとんどですが、攻城団は理念を共有することを優先しています。

言い換えれば万人に愛されることを諦めて、相手に配慮できる人たちだけに向けて運営してきたからこそよく褒めてもらえるサイトの「居心地の良さ」につながっているのでしょう。
(そしてこんなにもたくさんの同志がいたことに喜びと希望を感じています)
利用者を選ぶということと、閉鎖的・排他的な場にしないこと、このふたつを両立することが攻城団・団長のいちばん大事な仕事です。ぼくは今後もこのスタンスを変えるつもりはないですし、いつか誰かに社長や団長のポジションを譲る際も知識や技術より、この「魂」を継承できるかを重視するつもりです。

攻城団を立ち上げた当初、いつまでやるかなんて何も考えずにはじめました。それが気づけば10年です。そしてぼくも数か月後に50歳を迎えます。
そろそろ未来のことを考えなければならないのはたしかなので、次の10年間のメインテーマは攻城団の後継問題になるかと思います。吹けば飛ぶような会社ですが、未来の悩みを抱えられる程度の余裕が生まれたのは幸せなことなのでしょう。
おそらく今日のライブ配信では多少浮かれた言動もあるかもしれませんが、調子に乗るのは一日だけにして、また来年もみなさんとお祝いできるように、初心を忘れず11年目も丁寧に運営していきます!

2024年4月6日
攻城団 団長
こうのたけし

10周年ロゴグッズ

一年間の限定販売なので、ぜひお買い求めください!

10周年記念ライブ

4月6日(土)に攻城団テレビで生配信しました。アーカイブをご覧ください。

番組の途中で使用した「数字で見る攻城団の10年間」のスライドを公開します。

番組の途中で使用したCM動画を公開します。